なぜここまで明白な兵站の破綻を防ぐことができなかったのか。この問いに対し、半世紀近くにわたり読み継がれる名著『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』は鋭いメスを入れている。歴史学者の戸部良一ら気鋭の研究陣が共同執筆した同書は、旧軍の敗因を単なる戦略ミスではなく、日本特有の「組織構造の病理」として解き明かした。
軍事史の枠組みを越えてビジネス界にも多大な影響を与えた同書の分析によれば、日本軍は目的と手段を取り違え、過去の成功体験に縛られて環境変化への適応を怠った。作戦計画において兵站は従属的な要素とみなされ、現実的な補給計画を立案する参謀よりも、威勢のいい突撃論を唱える指揮官が重用された。客観的なデータやロジスティクスの限界を指摘することは「士気を挫く行為」としてタブー視されたのである。この構造的な無責任体質こそが、現場の兵士に不条理な犠牲を強いる根本原因となった。