オートマチック車(AT・CVT・DCT)や電気自動車(EV)において、Pレンジに入れた際に作動するのは油圧ブレーキではありません。トランスミッションのアウトプットシャフトに直結した「パーキングギア」の溝に、「パーキングロックポール(パーキングロックピン)」と呼ばれる金属製の小さな爪を物理的に噛み合わせることで、ギアの回転を機械的にロックしています。
このパーキングロックポールの先端サイズは、一般的な乗用車で親指大から小指大ほどの金属パーツに過ぎません。平坦に見える場所であっても、アスファルトにはわずかな傾斜や轍(わだち)が存在します。Pレンジを先に入れてフットブレーキを離してしまうと、数センチ車体が揺れ動いた瞬間に、1.5トンから2.5トンにも及ぶ強大な車輪の回転エネルギーが、この小さな金属ピン1本にダイレクトにのしかかります。
ピンに過度な荷重がかかり続けると、金属疲労による変形や摩耗、最悪の場合はロックポールの破断につながります。仮にピンが折れた場合、破片がミッション内部に混入してギア全体を粉砕する大惨事を引き起こし、トランスミッションの全交換(修理費用30万〜80万円以上)に発展するケースも珍しくありません。
また、ピンに強い荷重がかかった状態で再び発進しようとシフトレバーを「P」から「R」や「D」へ動かそうとすると、レバーが極端に重くなったり、「ガコン!」「バキッ」という激しい金属打刻音が発生します。この異音こそが、無理やり噛み合いを外されたギアとピンが悲鳴を上げている証拠です。