揚げ物の分類をより複雑にしているのが、竜田揚げ、フリッター、素揚げといった類縁料理の存在です。多くの人が「唐揚げと竜田揚げは何が違うのか」「フリッターは天ぷらの洋風版なのか」という疑問を抱えています。各料理の調理設計を比較すると、衣の違いと小麦粉片栗粉の使い分けによって見事な棲み分けがなされていることがわかります。
まず、唐揚げと天ぷらと竜田揚げの違いに注目します。竜田揚げは、広義の唐揚げのバリエーションに属しますが、原料の指定が厳密です。醤油とみりん、酒でしっかりと赤褐色に染まるまで漬け込んだ素材に対し、「片栗粉(馬鈴薯デンプン)のみ」をまぶして揚げます。仕上がりに片栗粉の白い粉が白波のように残り、肉の赤褐色と合わさる様子が奈良県の「竜田川の紅葉」に見立てられたことが名前の由来です。唐揚げが小麦粉や片栗粉、あるいはそのブレンドを柔軟に使うのに対し、竜田揚げは片栗粉特有のザクザクとした硬質なテクスチャーと竜田川の情景を模した外観を死守する点にアイデンティティがあります。
次に、西洋料理にルーツを持つフリッターと天ぷらの違いです。フリッターは小麦粉に牛乳、油、卵黄を混ぜ、さらにしっかりと泡立てた卵白(メレンゲ)やベーキングパウダーを加えて衣を作ります。高温の油に入れるとメレンゲ内部の空気が膨張し、まるでカステラやパンケーキのようにふんわりとした厚いクッション状の衣に仕上がります。天ぷらが「グルテンの形成を抑え、水分を素早く蒸発させて薄くサクサクに仕上げる」ことを至上命題とするのに対し、フリッターは「空気を含んだ衣そのもののボリュームとリッチな風味を味わう」料理であり、構造力学的に真逆のアプローチを採っています。
そして最もミニマルな調理法が素揚げです。粉も衣液も一切まとわせず、素材をそのまま油で加熱します。ナスやカボチャ、素干しの小魚などで多用され、衣がないため糖質の付加がなく、素材内部の水分が直接油と触れ合うため、素早い脱水と凝縮された旨味が特徴となります。