ネット上の弓道フォーラムや動画解説では、しばしば「こう構えれば的に中(あた)る」「的中率8割超えの裏技」といった表層的なノウハウが散見されます。しかし、ここに近代弓道の最大の罠が潜んでいます。
弓道の教理には「正射必中(せいしゃひっちゅう)」という根本原則が存在します。「正しい射を行えば、矢は自ずから的に中る」という意味ですが、多くの初心者はこれを逆転させ、「当たっているのだから自分の射法八節は正しい」と錯覚してしまいます。手先をひねったり、的の狙いを無理にズラして当てにいく「小細工の射」は、一時期的に的中をもたらしても、必ず深刻な射癖(しゃへき)を生み出し、最終的にはスランプから抜け出せなくなります。
全日本弓道連盟が昇段審査において、的中の有無だけでなく所作や体配(たいはい)を厳格に評価するのはこのためです。足踏みの一歩目から残心に至るまで、射法八節の規範が守られているか、手の内が正しく機能して弓が自発的に回転(弓返り)しているか。これらを満たした結果としての的中のみが、武道として価値を持ちます。「当てるための射」から「射法八節を忠実に具現化するための射」へとパラダイムシフトできるかどうかが、愛好家と真の射手を分ける境界線です。