タラの木には、植物学上の同一種でありながらトゲの現れ方が著しく異なる2つのタイプが存在します。それが「オダラ(雄鱈)」と「メダラ(雌鱈)」です。スーパーや直売所に美しくパック詰めされて並ぶタラの芽の多くは、作業効率を高めるために改良されたトゲの少ない「メダラ」ですが、天然の山野に足を踏み入れた際に遭遇するのは原則として野生種の「オダラ」です。
オダラは過酷な野生環境で草食動物などの食害から身を守るため、幼木から成木に至るまで幹・枝・さらには葉柄の裏側に至るまで鋭利なトゲを密生させています。手袋越しでも油断するとトゲが皮膚に刺さり、採取者を苦しめますが、そのぶん芽はぎゅっと締まり、野性味あふれる芳醇な香りとコクを備えています。山菜愛好家が「天然タラは別格」と評価する理由はこのオダラが持つ生命力にあります。
対照的にメダラは、幹のトゲが極めてまばらか、ほとんど退化して痕跡程度しか残っていません。農業用ハウスで「ふかし栽培」されるタラの芽はメダラの枝を切り揃えて水耕加温したものであり、柔らかくアクが少ない反面、野生本来の強い風味は控えめになります。山林を歩いていて「トゲがほとんどないタラに似た木」を見かけた場合、人為的に植えられたメダラが逸出したケースでない限り、ヤマウルシやヌルデなどの別種を疑う慎重さが求められます。