エアコンのガス補充は自分で可能?プロが止める危険性と費用の真実

エアコンのガス補充は自分で可能?プロが止める危険性と費用の真実

エアコンのガス補充は自分で可能?プロが止める危険性と費用の真実の真相や最新動向に迫る! 専門的な視点でご紹介しています。

実際に冷媒サイクルを正常化させるためには、極めてシビアな専門手順が要求されます。ネット上の簡易マニュアルで省略されがちな「プロの標準作業工程」を俯瞰すれば、いかに素人作業が無謀であるかが浮き彫りになります。

まず不可欠となるのが、マニホールドゲージ接続手順の厳格な遵守です。低圧側・高圧側のバルブ開閉状態を確認しつつ、室外機のサービスポートへチャージホースを迅速に接続しなければなりません。この接続時にモタつくと、高圧ガスが外へ吹き出し、手先に凍傷を負う直接の原因になります。さらに安価な非対応ホースを使うと、R32の高圧力に耐えきれずにホース自体が破裂する事故も起きています。

次に実施されるのが真空ポンプ真空引き方法です。配管内に残った空気や水分は、冷媒にとって最大の天敵です。真空ポンプを接続してゲージ圧をマイナス0.1MPa(絶対圧で数Torr以下)まで引き下げ、配管内部を極限まで乾燥・脱気しなければなりません。もし水分が微量でも残っていると、配管内部で氷結してキャピラリーチューブを詰まらせたり、オイルと反応して強酸を生み出し、モーター巻線の絶縁を破壊してショートを引き起こします。

そして極め付けがR32冷媒ガス補充手順における「精密計量」の壁です。自動車用エアコンのガス補充のように「低圧ゲージの圧力を見ながら適当に入れる」方法は、家庭用インバーターエアコンでは絶対に通用しません。インバーター機は室温や外気温、圧縮機の回転数によって運転圧力が刻一刻と激しく変動するため、圧力計の針だけで適正量を判断することはプロであっても不可能です。

現場では、室外機の銘板に記載された「規定充填量(例:850g)」を、高精度なデジタルチャージングスケール(重量計)を用いてグラム単位で計測しながら液冷媒を充填します。規定量より数十グラム多いだけでも「オーバーチャージ(過充填)」となり、コンプレッサーに液冷媒が戻って圧縮機が破損する液圧縮を引き起こします。逆に少なすぎれば冷えないばかりか、コンプレッサーの冷却が追いつかず焼き付き事故に至ります。これら一連の工程を、専用設備を持たない一般人が正確に遂行することは不可能なのです。

山崎 陸
著者

山崎 陸

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