マグマと溶岩を隔てる境界線は、極めて明確です。それは「地表面」です。地下深くで岩石が高温によって溶融した流動体はすべて「マグマ」と呼ばれ、それが火口を通過して地表や大気中、あるいは海中などの水中に噴出した瞬間に「溶岩」へと名称が変わります。
地球内部では、上部マントルや地殻深部において高温高圧の条件下で岩石の一部が溶融し、マグマが発生します。周囲の個体岩石よりも比重が軽いマグマは、浮力によって徐々に上昇し、地下数キロメートルから十数キロメートルの深度に位置するマグマだまりに一時的に蓄えられます。この地下空間に滞留している間は、どれほど高温で激しいエネルギーを秘めていても、学術上の呼称は「マグマ」以外の何物でもありません。
では、なぜ地表を境にして厳密に呼び名を切り替える必要があるのでしょうか。その理由は、地表に到達した瞬間に生じるダイナミックな「物理・化学的変容」にあります。地下深部では数十メガパスカル(数百気圧)以上の凄まじい地圧によって封じ込められていた融体が、噴火によって一気の大気圧(約1気圧)へと開放されます。この急激な圧力降下が、融体の性質を不可逆的に作り変えてしまうのです。