「茎突舌骨筋の起始・停止や支配神経を正確に即答できるか」と問われた際、迷いなく答えられる状態を作ることは、解剖学の試験突破のみならず頭頸部の運動学を理解する前提条件です。本筋は咀嚼・嚥下・発声に連動する舌骨上筋群の1つであり、耳の深部から前頸部へと斜めに走る細長い紡錘状筋です。
起始は頭蓋底下面に針のように突出した側頭骨茎状突起の基底部外面に位置します。そこから前下方かつ内側へと走行し、舌骨体と大角の境界部に停止します。この停止部付近で筋腱が2つに割れ、顎二腹筋後腹の中間腱を挟み込むように貫かせるという極めて珍しい形態学的特徴を持っています。
支配神経は顔面神経(脳神経VII)の枝(茎突舌骨筋枝)です。走行部位が頸部深層にあるため頸神経ワナや三叉神経第3枝(下顎神経)と混同されやすい傾向にありますが、発生学的に第2咽頭弓(鰓弓)に由来するため、同じ第2弓由来である顔面神経のコントロール下に入ります。作用は極めて明快で、舌骨を後上方へ牽引することです。これにより口腔底を持ち上げ、食塊を咽頭から食道へと送り込む初動を力学的に下支えします。