自宅で器の修復に挑戦したい読者のために、本漆を用いたオーソドックスな金継ぎのやり方と、必要な道具の全体像を整理する。初心者向けには、必要な道具が一式揃った市販の「金継ぎキット」の活用が最も手堅い。
【金継ぎに必要な主な材料・道具一覧】
- 生漆(きうるし)・黒漆・弁柄漆(赤色):接着、下地、中塗りに使用する天然漆。
- 小麦粉・水:生漆と練り合わせて強力な接着剤「麦漆(むぎうるし)」を作る。
- 砥の粉(とのこ)・木粉:欠けを埋めるペースト「錆漆(さびうるし)」や「刻苧(こくそ)」の原料。
- 金粉または銀粉・真鍮粉:仕上げの蒔き粉。食用安全性を極めるなら純金粉がベスト。
- ヘラ(竹製・プラスチック製)・面相筆・毛棒:漆の塗布や粉蒔きに用いる。
- 耐水ペーパー(#600〜#1500):各工程で表面を平滑に研ぎ出すサンドペーパー。
- テレピン油(またはエタノール):道具の洗浄や漆の粘度調整用。
- ゴム手袋・アームカバー:漆かぶれを徹底防御するための必須防護具。
- ダンボール箱・濡れタオル(漆風呂):漆が硬化するために必要な湿度(70〜80%)と温度(20〜25℃)を保つ保管庫。
【本漆金継ぎの基本的な5ステップ】
- 素地調整(下処理):破片の断面に付着した油分や汚れを洗い落とし、欠けの尖ったフチを耐水ペーパーで軽く面取りする。素焼き部分に生漆を染み込ませて下固めを行う。
- 接着(麦漆の塗布):小麦粉と水を練ったものに生漆を混ぜ合わせ、「麦漆」を作る。破片の接合面に薄く均一に塗り、ズレないようにマスキングテープで固定。漆風呂に入れて約2〜3週間じっくり乾燥・硬化させる。
- 欠け埋め(錆漆の充填):砥の粉に水を加えて練り、生漆を混ぜた「錆漆」を作る。接着面の段差や細かな欠けにヘラで充填し、硬化後に耐水ペーパーで研ぎ出して完全に平滑にする。
- 中塗り(黒漆・弁柄漆の塗布):平滑になった継ぎ目の上に、細い筆を使って黒漆または弁柄漆を極めて薄く塗る。この層が金粉を定着させる土台となる。
- 粉蒔き・粉固め(仕上げ):漆が半乾きの状態を見極め、毛棒や粉筒を使って金粉を優しく蒔きつける。乾燥後、余分な粉を払い落とし、ごく薄い生漆を塗って拭き取る(粉固め)ことで、金粉の剥離を恒久的に防ぐ。
実際に都内のワークショップに参加した30代女性は、手記のなかで次のように語っている。
「祖母の形見の染付皿が割れたときは絶望しましたが、漆を塗り重ね、最後に金のラインがすっと浮かび上がった瞬間は鳥肌が立ちました。乾燥に2ヶ月近くかかりましたが、待つ時間さえも愛おしく、以前よりずっと大切な宝物になりました」