『名探偵ピカチュウ』を語る上で最大のインパクトといえば、可愛らしいビジュアルから放たれる中年男性の渋い声です。初見の観客に強烈な違和感と笑いをもたらすこの設定ですが、単なるギャグではなく、物語の根幹に関わる緻密な伏線となっています。
物語のネタバレを含む真相として、このピカチュウの正体は、行方不明となった凄腕探偵ハリー・グッドマンの意識が宿った姿でした。事件の黒幕による陰謀と事故からハリーの命を救うため、伝説のポケモン・ミュウツーが応急措置としてハリーの意識を相棒ピカチュウの肉体へと融合させたのです。
ピカチュウ自身は記憶を失っていたものの、中身がハリー本人であるため、大人の嗜好であるブラックコーヒーをがぶ飲みし、言動も所作も完全に「おっさん」そのものになっていました。周囲の人間には通常の愛らしい「ピカピカ」という鳴き声にしか聞こえず、実の息子であるティム・グッドマンにだけ人間の人語として届いていたという仕掛けが、親子の絆を取り戻すミステリーの鍵を握っています。