物語の前半における雨は、姉の雪とは対照的に極めて繊細で臆病な男の子として描かれていました。都会の片隅で身を潜めるように暮らしていた頃は、夜泣きが激しく、外の世界を怖がり、何かあれば母である花(はな)の足元に隠れる姿が印象的でした。田舎へ移住してからも、活発に山野を駆け回る雪の後ろをおずおずとついて歩くような、どこか儚げな存在だったのです。
そんな雨に最初の大きな転機が訪れたのが、冬の渓流でヤマセミを追って川へ落ちた瞬間でした。冷たい水の中で自らの内に眠る野性の本能に目覚めた雨は、この日を境に急速な成長を遂げていきます。あどけなさが残っていた丸みのある輪郭はシャープに引き締まり、伏し目がちだった瞳には確固たる意志と野生の鋭さが宿るようになります。
特に10歳を迎える頃の人間としての姿は、やや長めの黒髪から覗く涼しげな目元、どこか憂いを帯びた表情が際立ち、観客に鮮烈な印象を与えました。同時に、狼へと変化した際の毛並みの美しさやしなやかな四肢の躍動感は、幼少期の弱々しさを完全に払拭し、一頭の気高い生き物としての完成美を見せつけています。