「お酒を飲んで体が温まれば生理痛が和らぐのではないか」と考える方がいますが、これは医学的に極めて危険な誤解です。アルコールを摂取した直後は一時的に末梢血管が拡張して体が温まったように感じられますが、アルコールが分解される過程でアセトアルデヒドが発生すると、体温調節中枢が乱れて急激な血管収縮と体温低下(いわゆるアルコール性の冷え)を引き起こします。
体が冷えると、子宮を収縮させて経血を押し出す働きを持つ生理活性物質「プロスタグランジン」が過剰に分泌されます。過度な子宮収縮は下腹部の激痛や腰痛の直接的な引き金となり、これが生理痛が悪化する理由の根幹です。お酒で痛みを麻痺させようとする行為は、結果として痛みの発生源に燃料を注ぐのと変わりません。
また、アルコールが持つ血行促進作用と抗凝固作用(血液をサラサラにする働き)によって子宮粘膜からの出血が助長され、経血量の増加と貧血リスクが顕著になります。普段から月経困難症や過多月経の傾向がある方の場合、急激な出血増に伴う起立性低血圧や失神発作を誘発する恐れがあるため、格別の警戒が必要です。