「赤と緑を混ぜると何色になるのか」という疑問に対し、色彩学の専門家や光学技術者はまず「何(物質か光か)を混ぜるのか」を確認します。日常で私たちが目にする混色現象は、大きく2つの物理現象に分かれているためです。
文房具店で購入する水彩絵の具、アクリル絵の具、油絵の具、あるいはカラーペンのインクなど、物質としての顔料をパレット上で均等に練り合わせた場合、完成する色は「茶色(オリーブがかった焦げ茶色)」、あるいは配合によっては「黒に近い濁ったグレー」へと沈んでいきます。小学校の図工や中学校の美術の授業で誰もが一度は体験する現象です。
対照的に、暗いステージ上で赤いピンスポットライトと緑のピンスポットライトを同じ床面に向けて照射すると、2つの光の円が重なり合った部分は、濁るどころか鮮やかに発光する「クリアな黄色(イエロー)」へと変化します。パソコンやスマートフォンの有機EL・液晶ディスプレイも、赤(R)と緑(G)の微細な発光素子を隣り合わせで同時に光らせることで、画面上に鮮烈な黄色を描き出しています。
この結果の乖離は、手元の絵の具の品質が悪いわけでも、目の錯覚による一時的な現象でもありません。光と物質が持つ、極めて合理的な物理法則の違いによって生じています。