山頂に巨大な鉄柱を運び込み、極寒の吹雪の中で送信所を作り上げた技術者たちの執念。NHKの不朽の名作『プロジェクトX〜挑戦者たち〜』をはじめ、数々のドキュメンタリーがその過酷な格闘の歴史を記憶してきた。過疎地や険しい山岳地帯に電波を届けることは、かつて国家的な悲願であり、高度成長期を支えた技術者たちの誇りそのものであった。
時代は流れ、現代の視聴スタイルは大きな変容を遂げた。Netflixに代表されるグローバルなSVOD(定額制動画配信)が定着し、テレビを持たない若年層が増加する中で、NHKオンデマンドなどのネット配信サービスが日常に溶け込んでいる。しかし、どれほどネット配信が普及しようとも、インターネット回線が過負荷でパンクする大災害時において、一瞬で数百万人に情報を届けられる電波の同時同報性に勝るメディアは存在しない。かつての挑戦者たちが築いたインフラは、デジタル時代においても依然として「最後の砦」として機能している。