体を丸めて伏せるのではなく、前足を突っ張ったまま頭を宙に浮かせ、背中を山のように丸めて息を潜める。このような猫がうずくまる理由の深層には、横たわることが物理的に不可能な循環器・呼吸器系の危機が隠れています。特に胸水貯留、重度の肺炎、肥大型心筋症に伴う肺水腫に陥ると、完全に横臥(横倒し)になると肺が圧迫され、溺水に近い窒息状態に陥ります。そのため、猫は起坐呼吸(きざこきゅう)と呼ばれる、胸腔を広げて少しでも酸素を取り込もうとする体勢をとらざるを得ないのです。
こうした状況で顕著化するのが猫の呼吸が荒い寝方です。安静に眠っているように見えながら、脇腹が激しくペコペコと上下し、肋骨の動きと腹部の動きが逆転するシーソー呼吸(奇異呼吸)を観察できることがあります。さらに悪化すると、口をわずかに開けて喘ぐ開口呼吸が始まります。犬と異なり、猫がパンティング(開口呼吸)を行うのは極端なパニック時を除き、生命維持の限界点に達している証拠です。
このような呼吸器系の破綻は数時間単位で急速に悪化し、突発的なチアノーゼ(舌や歯茎が紫色に変色する状態)から心肺停止に至るケースが少なくありません。眠そうに目を閉じているからと静観せず、次項に挙げる客観データをもとに、直ちに呼吸数をカウントする冷静な初期対応が求められます。