復権の狼煙(のろし)となったのは、異例の大ヒットを記録したアニメーション映画『この世界の片隅に』だ。片渕須直監督が見抜いた彼女の声の力は、戦時中を生きる主人公・すずの息遣いそのものだった。スクリーンから匂い立つようなリアリティと圧倒的な情念は、瞬く間に映画賞を総なめにした。
演技にとどまらない。劇場公開作『Ribbon』では自ら脚本・監督・主演を務め、コロナ禍で葛藤する美大生の美しくも狂おしい感情を瑞々しく描き出した。さらに『さかなのこ』では性別の垣根すら軽々と飛び越え、実在の人物をモデルにした主人公を怪演。日本映画界において「ノンにしか演じられない役」という絶対的なポジションを確立した瞬間だった。