だが、この塩まきには目に見える神聖さだけでなく、極めて現実的で科学的とも言える実用効果が存在する。それこそが、怪我防止と滑り止め効果だ。
巨漢同士が百数十キロの巨体をぶつけ合う土俵上では、足元の滑りは致命的な事故に直結する。粘土質の土俵表面に塩が撒かれると、土に含まれる適度な水分と塩分が反応し、表面のグリップ力が高まる。滑って膝の靱帯を痛めたり、転倒して重傷を負うリスクを減らすための知恵が、ここに詰まっているのだ。さらに、すり傷や擦過傷を負いやすい力士にとって、塩の持つ微弱な殺菌効果は傷口の感染症を防ぐ役割も果たしてきた。まさに先人たちの知恵が凝縮された実用的な対策と言える。