腐敗と発酵を分けるものは、科学的には極めて紙一重だ。どちらも微生物が有機物を分解するプロセスに過ぎず、人間に有益な物質が生成されれば発酵、有害な毒素が発生すれば腐敗と呼ばれる。世界各地に根付く強烈な発酵食品は、微生物がタンパク質をアミノ酸へと分解し尽くした結果生じる、究極の「旨味の塊」でもある。
伝統的な保存食の製造技術は、現代の食品発酵産業においても革新的なヒントを与え続けている。過酷な寒冷地や乾燥地帯では、微生物の働きを借りて食材を変化させなければ、長い冬を越すことができなかった。鼻を覆いたくなるような揮発性の有機酸やアミン類は、豊かなアミノ酸やグルタミン酸が凝縮されている証拠でもある。
最初の強烈な臭気というハードルを越えた者だけが、濃厚なコクと複雑な余韻という報酬にたどり着く。現地の人々がそれらの料理を愛してやまないのは、幼少期から慣れ親しんだ郷愁だけでなく、人体の味覚受容体が純粋な旨味の密度を感知しているからに他ならない。