動物病院の眼科外来で頻繁に診断されるのが「結膜炎」と「角膜炎」、そして角膜炎が悪化した「角膜潰瘍」です。似たような症状に見えますが、ダメージを受けている組織の深さと重篤度はまったく異なります。
まず把握しておきたいのが猫の結膜炎と角膜炎の違いです。結膜炎は、まぶたの裏側や白目を覆うピンク色の粘膜(結膜)が炎症を起こす疾患で、白目の充血や軽度の目やに、まぶたの腫れが主症状となります。一方、角膜炎は黒目の表面を覆う透明な膜(角膜)に炎症が生じる病態です。角膜には無数の知覚神経が通っているため、角膜炎になると猫は激痛を感じ、目を固く閉じて開けようとしません。
角膜の傷が深層にまで及んだ状態が猫の角膜潰瘍の症状と治療における最重要局面です。角膜表面が削れてクレーター状にえぐれるため、放置すれば角膜が破れる「角膜穿孔」を引き起こし、眼球内容物が漏れ出して失明に至ります。
治療では、特殊な染色液(フルオレセイン)で傷の深さを判定した上で、抗生剤点眼薬や角膜保護剤(ヒアルロン酸など)を1日4〜6回頻回投与します。傷の治癒が遅い難治性潰瘍や深部潰瘍の場合、瞬膜をまぶたに縫い付けて角膜を保護する「瞬膜フラップ手術」や、コンタクトレンズの装着が必要となるケースもあります。