急激な減量がもたらす最大の代償は、「適応熱産生(アダプティブ・サーモジェネシス)」と呼ばれる代謝の急降下である。医師や内分泌学者たちが最も警鐘を鳴らすのは、基礎代謝の崩壊とホルモンバランスの破綻だ。
短期間で飢餓に近い状態へ追い込まれると、身体は「生命の危機」と判断し、甲状腺ホルモン(T3)の分泌を抑制する。同時に、満腹感をもたらすレプチンの血中濃度が急落し、強烈な食欲を刺激するグレリンが過剰に分泌される。この防衛反応により、安静時に消費されるエネルギー量、すなわち基礎代謝そのものが大幅に目減りしてしまう。
恐ろしいのは、食事を通常の状態に戻しても、落ち込んだ基礎代謝はすぐには回復しない点だ。燃焼効率が極限まで落ちた「省エネモード」の肉体に以前と同じカロリーを流し込めば、余剰エネルギーは猛烈な勢いで脂肪細胞へと再蓄積される。これがリバウンドの生化学的メカニズムであり、短期間で体重を落とした者の多くが、開始前よりも体脂肪率の高い「隠れ肥満」へと変貌してしまう理由である。