単なる溢乳ではなく、背後に潜む疾患によって引き起こされる嘔吐には明確な医学的特徴が存在します。特に生後2〜3週間から生後2ヶ月頃の時期に発症しやすい代表格が、肥厚性幽門狭窄症(ひこうせいゆうもんきょうさくしょう)です。
この疾患は、胃の出口である「幽門部」の筋肉が肥大して胃の内腔が狭くなり、飲んだミルクが十二指腸へ流れなくなる病態を指します。胃の中にミルクが溜まり続けるため、授乳のたびに圧力が限界に達し、前述の通り新生児がミルクを噴水のように噴射して吐く状態に陥ります。特徴的なのは「吐いても吐いても激しくミルクを欲しがる」点です。放置すると急激な脱水と電解質異常、著しい体重減少を招くため、超音波検査による確定診断と外科手術(粘膜切開術)または硫酸アトロピンを用いた内科的治療が不可欠となります。
もう一つの注意すべき病態として、胃軸捻転症(いじくねんてんしょう)の症状が挙げられます。胃を固定する靭帯が未発達なために胃が正常な位置からねじれてしまう状態で、生後1ヶ月でミルクを毎回吐くような頑固な嘔吐や、腹部の膨満、授乳時の激しい不機嫌を引き起こします。多くは成長とともに靭帯が発達して生後6ヶ月から1歳頃までに自然治癒しますが、吐き出しがひどく体重が増えない場合は姿勢療法などの介入が行われます。
さらに、発熱がないにもかかわらず嘔吐を繰り返す背景として、新生児期のミルクアレルギー(新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症)の症状も無視できません。人工乳に含まれる牛乳タンパクに対する免疫反応により、授乳後数時間を経過してから激しい嘔吐や下痢、血便を引き起こします。湿疹などの皮膚症状が出ない消化器型のアレルギーも存在するため、専門医による適切なアレルギー用特殊ミルク(加水分解乳)への切り替え判断が求められます。