中枢神経や脳を持たない単細胞生物でありながら、高度な問題解決能力を発揮するのが真正粘菌(モジホコリ)の知性の謎です。北海道大学の中垣俊之教授らの実験で世界的に有名になった「粘菌による迷路脱出」や「関東地方の鉄道網再現実験」は、今なお情報科学界に衝撃を与え続けています。
粘菌は餌(オートミール)が置かれた複数の拠点を結ぶ際、養分を効率的に輸送しつつ断線リスクを最小限に抑える管状ネットワークを自律的に構築します。その幾何学的パターンは、人間が数十年かけて設計したJR東日本の鉄道路線網と驚くほど高精度で一致しました。この自律分散的な最適化能力は、電力網の最適化やAIの経路探索アルゴリズムへと応用されています。
さらに、自然界のダークサイドとも言える驚愕の現象が寄生生物の驚きの生態です。昆虫の行動を支配する冬虫夏草菌(コルディセプス)や、カタツムリの触角に寄生して鮮やかなイモムシのように脈動させ、鳥類にわざと捕食させるロイコクロリディウムなどは、まさに「閲覧注意の奇妙な生物」の代表格です。
これらの寄生生物は、宿主の神経伝達物質(セロトニンやドーパミンなど)の分泌を化学的にハックし、自らの生殖に最も都合の良い行動を宿主に強制します。寄生されたカタツムリは本来の習性である暗所を避け、自ら明るい木の葉の先端へと這い出します。この冷徹なまでの適応進化は、生命が環境だけでなく他者の神経系すら自らの生存インフラとして利用することを示しています。