インターネット上のチュートリアルでは「写真をトレスすればリアルに描ける」という短絡的な解説が散見されますが、これはプロの作画理論から見ると大きな誤解です。写真をそのままなぞっただけのイラストは、立体感が失われて平面的になり、鑑賞者に「不気味の谷」に似た違和感を与えがちです。
リアルな表現において最も重要なのは、植物の「構造理解」と「光の透過現象」の再現です。花弁はプラスチックのような不透明な板ではなく、極めて薄い細胞層で構成されています。光が内部で乱反射して抜けていくサブサーフェス・スキャタリング(表面下散乱)を意識し、光が当たる側の花弁の裏側やエッジに鮮やかな固有色(彩度の高い中間調)を置くことで、植物特有の生々しい瑞々しさが生まれます。
また、生成AI素材の利用に関しても注意が必要です。2026年現在のAI画像生成ツールは一見すると極めて精緻な描写を出力しますが、「花弁の重なり順序が生物学的に破綻している」「茎の生え方が不自然」「雄しべの数が植物の科・属の規定と矛盾している」といった構造的エラーが多発します。植物画としての正しさが求められる学術書、製薬会社・化粧品ブランドの広告などでは、AI生成物をそのまま使うリスクが高く、人間の専門家による監修や手作業のレタッチが不可欠となっています。