ネット上のランニングブログなどでは「新潟シティマラソンはアップダウンがなく秋の涼しい風が吹くため、シーズン初戦のPB狙いに最適」という言説がまことしやかに語られています。しかし、この言説を鵜呑みにして出走することは極めて危険です。気象庁の過去データと現場の観測事実を照らし合わせると、そこには見過ごされがちな2つの気象学的盲点が存在します。
1つ目の盲点は「フェーン現象に伴う異常高温」です。10月上旬の新潟は、日本海を通過する低気圧の影響で南風が山を越え、突発的に気温が25度を超える夏日を記録することがあります。湿度が低く風が強い状態で気温が上昇すると、発汗による脱水症状が急速に進行します。水分補給のタイミングを誤ったランナーが脱水や熱中症で次々と立ち止まる光景は、過去の大会でも幾度となく目撃されてきました。
2つ目の盲点は、市街地と河川敷における「応援の密度ギャップによるメンタル低下」です。デンカビッグスワンスタジアムから新潟駅前、柾谷小路、萬代橋周辺までは途切れない市民の大歓声に包まれ、アドレナリンによってペースが自然と上がります。ところが、コースが海岸道路ややすらぎ堤に移ると沿道の観衆が一気にまばらになり、日本海の波音と吹き付ける風の音だけが響く静寂の世界へと急変します。この環境の激変がランナーの脳に孤独感と過度な疲労感を自覚させ、急激なペースダウンを引き起こす心理的落とし穴となっているのです。