紀の善は、伝統的な甘味ファンのみならず、アイドルカルチャーの文脈でも特別な地位を築いていました。乃木坂46が2013年にリリースした6thシングル『ガールズルール』のカップリング曲『他の星から』(西野七瀬センター)の歌詞中に登場したことが契機です。
「紀の善で あんみつ食べられれば それ以上の贅沢は 望まない」という秋元康氏によるフレーズは、日常のささやかな幸福の象徴として描かれ、ファンの間で爆発的な聖地巡礼ブームを巻き起こしました。日本武道館や東京ドームでのライブ前後には、全国から集まったファンが神楽坂下交差点まで長蛇の列を作り、あんみつや抹茶ババロアを味わう光景が風物詩となっていたのです。
閉店が発表された2026年秋、SNSやオンラインコミュニティには悲鳴に近い声が溢れました。「青春の1ページが消えてしまった」「あのあんみつ以上の贅沢がもう味わえない」といった投稿がトレンド入りし、単なる一飲食店の閉店を超えたカルチャーの喪失として大きく報じられました。