仏事の準備で最も頻発する間違いが、墨の濃淡に関する判断です。葬儀や通夜に持参する香典では「突然の訃報に涙で墨が薄まった」「急いで駆けつけたため墨を十分に磨れなかった」という深い哀悼の情を表すために薄墨を用いる慣習があります。しかし、お布施は薄墨か濃墨かという問いに対する正解は、明確に「濃墨(通常の濃い黒墨)」です。
お布施は、仏教における六波羅蜜(ろくはらみつ)の修行の一つ「布施波羅蜜」に由来します。故人の霊前に供える金品ではなく、御本尊にお供えし、読経や戒律を授けてくれた僧侶(寺院)へ感謝を捧げる金封です。つまり、悲しみを表す場ではなく「感謝の意を表す儀礼」であるため、慶事と同様にしっかりと磨った濃い黒墨筆、あるいは濃黒の筆ペンで書くのが正しい作法となります。
また、現代の家庭で疑問視されやすいのが「お布施をボールペンで書くのはNGか」という点です。結論として、ボールペンやサインペン、鉛筆などで表書き・裏書きを済ませるのはマナー違反と見なされます。事務的な筆記用具は略式と受け取られ、厳粛な儀式に対する礼を欠く印象を与えかねません。毛筆を用意できない場合でも、文具店やコンビニエンスストアで購入できる慶弔用の筆ペン(濃墨側)を使用してください。