1988年を最後に紅白のステージから完全に遠ざかっていた小泉今日子さんですが、四半世紀が経過した2013年(第64回)の紅白歌合戦にて、事前予告なしの電撃復活を遂げました。この年の上半期に放送され、日本中に旋風を巻き起こした連続テレビ小説『あまちゃん』の特別編企画コーナーです。
ドラマ内で主人公・アキ(のんさん)の母親であり、かつてアイドルを目指して挫折した過去を持つ「天野春子」役を熱演していた彼女は、ドラマの世界観を引き連れてNHKホールのステージ中央に降臨。劇中歌「潮騒のメモリー」のイントロが鳴り響き、スポットライトを浴びた瞬間、会場は割れんばかりの大歓声とどよめきに包まれました。
薬師丸ひろ子さん演じる大女優・鈴鹿ひろ美との劇中での因縁や絆、そして北三陸の仲間たちが勢揃いしたドラマ連動の演出は、単なる懐メロ歌手の再登板とは一線を画すものでした。フィクションとノンフィクション、過去の昭和アイドル史と現代の物語が交錯するこのステージは、紅白の歴史に残る屈指の神回として語り継がれています。この一夜限りの復活劇は、彼女が「紅白という場を完全に拒絶しているわけではない」という事実を何よりも雄弁に物語っていました。