布袋寅泰と今井美樹の結びつきを語るうえで避けて通れないのが、前妻・山下久美子の存在です。布袋と山下は1986年1月に結婚。当時、BOØWYのギタリストとして頭角を現していた布袋は、すでに「総立ちの久美子」としてロックシーンを牽引していた山下の音楽制作を全面的にサポートし、公私ともに最高のパートナーとして業界内外から羨望を集めていました。
この二人の生活に今井美樹が登場したのは、1980年代後半のことです。山下の熱心なファンであり、音楽的にも山下を慕っていた今井は、やがて山下の自宅へ頻繁に出入りするほど親密な間柄へと発展していきました。当時の状況について、山下久美子は2002年に上梓した自伝的手記『ある愛の詩』のなかで、妹のように可愛がり、恋愛相談にも乗っていた後輩が、次第に夫である布袋との精神的な距離を縮めていった過程を生々しく告白しています。
布袋と今井の距離が決定的に近づいた契機は、楽曲提供とプロデュースワークでした。1987年のシングル『野生の風』の楽曲提供を皮切りに、音楽家としての布袋は今井の持つ類まれな透明感とボーカルのポテンシャルに強く惹きつけられていきます。やがて仕事上のパートナーシップは私的な領域へと侵食し、布袋の心は急速に山下から離れていきました。
1997年11月、布袋と山下久美子は約12年におよぶ婚姻生活に終止符を打ち、正式に離婚。そのわずか1年7カ月後となる1999年6月、布袋と今井美樹は入籍を発表しました。かつての親友から夫を奪う形となったこの再婚劇は、当時の芸能ワイドショーや週刊誌で「平成最大の略奪劇」として連日センセーショナルに報じられ、今井のクリーンだったパブリックイメージは激しい批判にさらされることになりました。