日本人が痩せ型であっても糖尿病を発症しやすい背景には、欧米人と比較した「遺伝的脆弱性」と、現代特有の「後天的生活習慣」が複雑に絡み合っています。ここで整理すべきは、「インスリン分泌不全」と「インスリン抵抗性」の決定的な相違点です。
臨床現場で多くの糖尿病患者を診察する専門医(神戸きしだクリニック等の報告)によると、歴史的に東アジア人(日本人を含む)のすい臓は、欧米人と比較してインスリンを分泌する能力(β細胞の基礎分泌力)が約半分程度しかないことが分かっています。過食による強いインスリン抵抗性に直面しても、欧米人のすい臓は大量のインスリンを分泌して血糖値を強引に抑え込める場合がありますが、日本人のすい臓は早期に疲弊し、インスリンの分泌自体が低下してしまいます。これが従来説明されてきた痩せ型におけるインスリン分泌不全の典型例です。
しかし、近年の患者群に見られる異変は、この分泌低下に加えて、前述の「インスリン抵抗性」が同時に併発している点にあります。つまり、「もともとインスリンを出すパワーが弱い体質」の上に、「出されたわずかなインスリンすら効かない筋肉・肝臓の状態」が上乗せされているのです。
この二重苦がもたらす最悪のシナリオが、「空腹時血糖値は正常なのに、食後だけ異常に跳ね上がる血糖値スパイク」です。一般的な会社の定期健康診断では、朝食を抜いた「空腹時血糖値」と「HbA1c(過去1〜2か月の平均血糖値)」のみを測定することが大半です。痩せ型の人は基礎的なインスリン分泌がかろうじて保たれているため、空腹時の数値は「90mg/dL前後」と極めて優秀なA判定を示します。しかし、糖質を含む通常の食事を摂った途端、筋肉の受け入れ拒否によって食後1〜2時間の血糖値が180〜200mg/dL超まで急激に乱高下する現象が見落とされ続けているのです。