キス写真そのものはネット特有の誇張であったとしても、二人の間に「かつて本物の恋愛感情が存在した」ことは周知の事実です。深瀬とさおりは、東京都大田区の同じ小中学校に通っていた幼馴染(さおりが1学年後輩)。さおりが中学生、深瀬が高校生だった時期に、約1年間にわたって実際に交際していました。
この思春期の交際と別れについては、藤崎彩織が執筆し直木賞候補にも選出された自伝的小説『ふたご』の中に生々しく描写されています。作中の主人公「夏子」と、圧倒的なカリスマ性を持ちながらも精神的に脆い「月症(つきしょう)」の関係性は、深瀬とさおりの実体験を忠実にトレースしたものとして読書界でも大きな話題を呼びました。高校中退、精神科の閉鎖病棟への入院といった壮絶な挫折を味わった深瀬を、さおりは献身的に支え続け、やがてライブハウス「club EARTH」の手作り設立へと繋がっていきます。
ファンの間で長年神格化されている初期の名曲『幻の命』も、二人の複雑な過去を語る上で欠かせません。作詞を深瀬、作曲をさおりが手掛けたこの楽曲には、「白い病院で死んだ子供」「4月30日」といった極めて具体的な歌詞が登場します。このためネット上では「二人の間にできた子供の中絶や流産を歌ったものではないか」という過激な憶測が都市伝説のように語り継がれてきました。
しかし、当時の関係者の証言やその後のインタビューを総合すると、この歌詞は物理的な出来事そのものを指しているのではなく、「失われてしまった純粋な時間」や「二人がかつて共有していた幼い夢の終わり」を象徴する文学的メタファーであると解釈するのが極めて自然です。現実の痛烈な痛みを音楽へ昇華させることで、二人は過去の恋愛を完全に終わらせ、バンドという運命共同体へ舵を切ったと言えます。