全888回という壮大な物語は、平次を取り巻くレギュラー陣の息の合った掛け合いなしには語れません。なかでも、平次を家庭で支える妻・お静と、事件現場を駆け回る子分・八五郎(ガラッ八)の存在は、作品のトーンを決定づける重要な役割を果たしました。
妻のお静役は、シリーズの歴史の中で交代を経験しています。初代お静を務めたのは八千草薫(第1話〜第158話)でした。清楚で可憐、芯の強さを秘めた八千草のお静は、武家出身の気品と町家の女房としての健気さを両立させ、番組の初期人気を不動のものにしました。その後、鈴木紀子などの出演期間を経て、第263話から最終回まで実に600回以上にわたりお静を演じ抜いたのが香山美子です。香山が演じたお静は、平次の激務を笑顔で包み込み、時には機転を利かせて捜査を助ける「理想の江戸女房」として定着。橋蔵との夫婦の空気感は本物の夫婦以上と称賛されるほど円熟味を増していきました。
一方、平次の無二の相棒である八五郎(ガラッ八)も、作品に欠かせない清涼剤でした。短気でそそっかしいけれど情に脆いガラッ八のキャラクターは、工藤堅太郎をはじめとする名バイプレイヤーたちによって大切に受け継がれました。さらに、平次のライバルとしてコミカルな対立構造を作り出した三ノ輪の万七親分(遠藤太津朗)と手下の松吉(池信一)とのテンポの良いやり取りは、重くなりがちな捕物帳に極上のユーモアをもたらしました。
そして、作品のオープニングを彩った舟木一夫が歌う主題歌「銭形平次」(関沢新一作詞、安藤実親作曲)は、「男だったら 一つにかける」という力強いフレーズとともに、時代劇主題歌の枠組み組みを超えた国民的ヒット曲として、番組の躍動感を毎週お茶の間に届け続けました。