「普段の洗濯で脱水まで終わっているのだから、中は空っぽのはずだ」という思い込みこそが、水漏れ事故を引き起こす最大の要因です。洗濯機には、洗濯槽だけでなく給水バルブ(電磁弁)、内部の循環ポンプ、そして排水トラップやジャバラ状の排水ホースに至るまで、複雑な水路が張り巡らされています。構造上、通常の脱水運転を終えた状態でも約1.0〜2.5リットル前後の残留水が内部に留まる仕組みになっています。
水抜きをしないまま本体を斜めに傾けたり、持ち上げて移動させたりすると、内部の傾斜センサーや電気基板へ水が浸入し、一発でショートして再起不能になるケースも珍しくありません。さらに深刻なのが引越しトラック内での漏水事故です。国土交通省の標準引越運送約款において、荷物の特性に応じた事前の荷造りや機器の適切な処置は荷送人(依頼主)の義務とされており、水抜きを怠ったことによる他家財の汚損や濡損は、運送保険の対象外として自己負担を迫られるリスクを孕んでいます。
大手引越し業者の現場責任者は取材に対し、「水抜きがされていない洗濯機は、トラックに積んだ瞬間に振動で水が噴き出し、階下や他のダンボールを全滅させる凶器になり得ます。当日朝に水滴が滴っている場合、その場で積み込みをお断りすることもあります」と証言しています。洗濯機の水抜きが必要な理由は、単に作業員の手を濡らさないためではなく、家財と新居の床を浸水被害から守るための絶対的な防衛策なのです。