『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』の最終話(第10話)は、日本のテレビドラマ界において最も物議を醸したラストシーンの一つとして知られています。国家を守るために自らの倫理観を殺し、汚れ仕事を請け負い続けてきた特捜班メンバーたちが、ついに臨界点(クライシス)を突破した瞬間でした。
最終話の終盤、自衛隊員によるクーデター未遂事件を辛うじて阻止した特捜班の稲見朗(小栗旬)と田丸三郎(西島秀俊)。しかし、国家の上層部は事件の隠蔽を図り、真実を国民から覆い隠します。稲見はかつて特殊作戦群時代に犯した自責の念から完全に救済されず、田丸もまた信じた正義の虚無感に打ちのめされます。居酒屋での会話で、稲見が漏らした「俺たち、この国に裏切られたんじゃないですかね」という言葉は、彼らの内なる倫理崩壊を決定づけました。
そして迎えるラスト数分。オフィスに戻った班長の吉永(田中哲司)、樫井(野間口徹)、大山(新木優子)、そして稲見と田丸の表情から一切の生気が消え去ります。部屋のテレビモニターに突如として映し出されたのは、「緊急臨時ニュース」の報を告げる無機質なテロップでした。何が起きたのか具体的な事件内容は明かされないまま、稲見が冷徹な視線で正面を見据えた瞬間に画面が暗転し、エンドロールも主題歌も流れることなく無音で幕を閉じます。
この演出が意味する真相について、制作陣が発信してきたメッセージや金城一紀氏の過去の著作傾向を踏まえると、結論は一つに収束します。すなわち、特捜班自身が「国家に牙をむくテロリスト」へと反転した瞬間です。第1話から一貫して描かれてきたのは、政治家や権力者の都合で使い捨てにされる若者たちと、それを間接的に見殺しにしてきた特捜班自身の罪悪感でした。防衛や治安維持という美名のもとで悪を庇護し続ける国家に対し、彼らは従属を拒み、自らの手で体制そのものを攻撃する引き金を引いたと解釈するのが極めて自然な帰結です。