金井政人というアーティストを語る上で欠かせない盲点が、「楽曲のリアリティ=本人の実体験」という短絡的な解釈の罠です。BIGMAMAの楽曲には、胸を締め付けるような情熱的なラブソングや、失恋の痛み、永遠の愛を誓うフレーズが数多く登場します。そのため「これほどリアルな恋愛感情を書けるのだから、長年連れ添うパートナーや妻がいるはずだ」と受け取るリスナーが後を絶ちません。
しかし、過去の音楽誌インタビューやエッセイ集において、金井は自身の作詞手法について「頭の中に構築した映画のような物語を言葉に落とし込んでいる」「架空の主人公になりきって感情を極限まで増幅させる」と度々明言しています。小説家としても著書を発表している彼にとって、歌詞は告白録ではなく、極めて精巧に編み上げられたフィクションの芸術です。