事件当初、なぜ宗教団体の幹部ではなく元首相が狙われたのかという点に疑問が集まりました。警察の取り調べに対する供述や、犯行直前に岡山市からフリージャーナリスト宛てに投函された手紙によって、その短絡的かつ執拗な思考の変遷が明らかになっています。
当初、被告が標的としていたのは旧統一教会の最高実力者である韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁ら教団幹部でした。2019年には愛知県内で開かれた教団関連イベントに火炎瓶を持って接近を試みたものの、会場への立ち入りが制限されていたため襲撃を断念しています。その後、新型コロナウイルスの世界的大流行により教団幹部の来日が途絶え、接触の機会は完全に失われました。
行き場を失った復讐心の中で被告が目を向けたのが、2026年9月に教団系の友好団体「天宙平和連合(UPF)」の大集会へ送られた安倍元首相のビデオメッセージでした。この映像を見た被告は、「元首相が教団の日本国内における最大の擁護者であり、社会的な信用を付与している」と一方的に確信。教団本体への打撃を与えるための手段として、政治家への襲撃へと論理を飛躍させていきました。
押収されたノートや供述調書には、「安倍氏を殺害すれば、統一教会への批判が集まり、社会問題化する」という冷徹な計算が記されていました。結果として凶行は実行され、日本社会に前代未聞の衝撃を与えることとなりました。