医療行為である以上、副作用の危険性を客観的に把握しておくことは不可欠です。結論から言えば、笑気麻酔は170年以上の臨床応用実績を持つ、医薬品の中でもトップクラスに安全性が高い薬剤の一つです。しかし、特定の疾患や身体条件を抱えている場合には重大な禁忌が存在します。
笑気ガスには、体内の閉鎖腔(密閉された空間)に入り込んでその容積を膨張させるという物理的特性があります。このため、中耳炎の急性期にある患者、気胸の既往がある患者、腸閉塞を患っている患者には使用できません。閉鎖腔の圧力が急激に上昇し、鼓膜の破裂や肺の損傷を招く危険があるためです。また、ビタミンB12の代謝障害を引き起こす恐れがあるため、妊娠初期(特に器官形成期である第1トリメスター)の女性に対する投与も原則として回避されます。
小児歯科領域における子供への安全性についてはどうでしょうか。結論として、笑気吸入鎮静法は小児患者の恐怖心軽減に極めて推奨されています。小児は成人に比べて環境変化への適応が未熟であり、無理やり押さえつけて治療を行うと生涯にわたるトラウマ(歯科治療恐怖)を植え付けるリスクがあります。笑気麻酔を使用することで、小児は苦痛を感じることなく安全に治療を受け入れられます。また、体外への排出が極めて早いため、内臓への負担や治療後のふらつきによる事故リスクが少ない点も小児歯科で重宝される理由です。
一般的な軽微な副作用としては、吸入中の軽度の吐き気やふらつき、頭痛が挙げられますが、これらは吸入終了後に100%酸素を数分間吸い続ける「ウォッシュアウト」を適切に行うことで、血中の笑気を完全に追い出し、予防・解消することが可能です。