象形文字の本を手に取る前に知っておくべき最大の盲点は、「象形文字=見た目通りの意味を表す絵」という固定観念の誤りです。ネット上の簡易的な解説記事などでは、この本質が省略されてしまうことが少なくありません。
古代の文字制作者たちは、具体的な「モノ(牛、家、太陽)」を描くことには成功しましたが、すぐに「愛」「信じる」「昨日」といった抽象的な概念や動詞をどう表現するかという壁にぶつかりました。そこで生み出されたのが、音を借りる「仮借(かしゃく・レブス原理)」です。
たとえばヒエログリフでは、「家」の絵(ペル)を使って「出る(ペリ)」という発音を表すように変化していきました。漢字でも、「象形」からスタートしつつ、意味と音を組み合わせた「形声文字」が全体の8割以上を占めるようになります。象形文字の本を選ぶ際は、単に「絵と意味の一覧」を並べただけの浅いカタログではなく、「文字が音と結びついて進化していく文法構造」を平易に解き明かしている本を選ぶことが、真の理解への近道です。