一般的なニホンザルの群れといえば、厳格な縦社会と強いオスによる力での支配が真っ先に思い浮かぶだろう。威嚇や噛み合い、食料を巡る熾烈な喧嘩は、全国各地の野生猿の生息地でしばしば観察される光景だ。ところが、淡路島の群れにはそうした刺々しい気が一切流れていない。
動物行動学の研究者が注目するのは、この群れに見られる「高い寛容性」だ。身体の大きなオスが、弱い立場にあるメスや幼い子ザルにエサ場を譲る姿が日常的に見られる。力で押さえつけるのではなく、相互の譲り合いによって自然と秩序が保たれているのだ。無理な人工飼育を排し、自然放任の姿勢を貫いてきた歴史が、サルたちの精神的なゆとりを育んだと言われている。