多くのイラスト愛好家が抱える「厚塗りイラストが思い通りにいかないのは一体なぜか」という疑問。その根本を辿ると、感覚頼りの塗り重ねによって引き起こされる「色の濁り(彩度崩壊)」と「面の捉え方の曖昧さ」という2つの構造的欠陥に行き着きます。
デジタル作画における厚塗りで色が濁る失敗の真相は、キャンバス上の混色をスポイトで無無作為に拾い直す行為にあります。明部と暗部の境界にある中間色をスポイトで吸い、それを周囲に塗り広げ、さらにその中間色を吸って塗る――このフィードバックループを繰り返すと、色は瞬く間にカラーサークルの無彩色(グレー)側へ引き寄せられます。結果として、陰影ではなく単なる「汚れ」が画面に広がってしまうのです。
さらに、厚塗りイラストの立体感の出し方において致命的となるのが、対象を「線」で捉えたまま塗り始めてしまうミスです。リアルな立体感を構築するプロは、対象を球体、円柱、直方体などの単純な多面体に還元して光と影を設計します。光が当たる面(明面)、光が遮られる面(陰面)、地面や周囲からの照り返しを受ける面(反射光)という明確な面の明暗比率(コントラスト)が保たれていない状態では、いくらディテールを描き込んでも平坦な印象を拭えません。