ヨドバシカメラやビックカメラ、ヤマダデンキなど、業界大手が一律10%前後の自社ポイント還元を主力戦略に据える中、なぜケーズデンキは愚直なまでに現金値引きにこだわり続けるのでしょうか。その背景には、行動経済学の観点からも極めて合理的な経営哲学が存在しています。
ポイント還元システムの本質は、消費者を自社の店舗網へ縛り付ける「スイッチング・コスト(乗り換え障壁)」の構築にあります。顧客目線では「実質10%引き」に見えても、実際には「次回の買い物でしか使えない権利」を前払いしているに過ぎず、ポイントを使わずに有効期限を切らしてしまえば、割引恩恵は実質ゼロに転落します。日本銀行や経済産業省の各種消費動向調査を見ても、毎年膨大な額の共通ポイントや家電量販店ポイントが未使用のまま失効している実態が指摘されています。
ケーズデンキを運営する株式会社ケーズホールディングスは、創業期から「がんばらない経営」という独自の看板を掲げ、従業員への個人ノルマを課さないことで知られています。ポイント制度を導入すると、企業会計上は将来のポイント使用に備えて「ポイント引当金」を負債として計上し続けなければならず、システムの保守運用やポイント管理コストも莫大なものになります。ケーズデンキはこれらの中間管理コストを徹底的に削ぎ落とし、その原資を「いま目の前で買ってくれるお客様への即時値引き」へとダイレクトに還元する道を選びました。
心理的にも、次回の再来店を強制されるストレスから解放される現金値引きは、購買後の満足度(顧客ロイヤルティ)を極めて高く保ちます。実際に店舗を訪れた利用者の手記や購買インタビューを分析すると、「ポイント残高の有効期限を気にする煩わしさから解放された」「今この瞬間の財布から出ていく支出が最も少ないのが最大の安心感」という率直な声が多数を占めています。