私立・公立高校の現場で実際に採点を担当する教員へのヒアリング取材では、採点現場におけるリアルな減点パターンが浮き彫りになっています。
多くの高校生が犯す最大の過ちは、「教科書の言葉をそのまま抜き出して、主語と述語の対応を崩してしまうこと」です。例えば「虎になった理由」を問う設問で、単に「己の臆病な自尊心と尊大な羞恥心のせい」とだけ書いた答案は、4点満点中1点〜2点程度しか与えられません。教員側が求めているのは、その2つの語句が「李徴の具体的な行動にどう反映されたか」という因果関係の説明です。
ネット上のまとめや簡易解説では「李徴は運命に翻弄されて虎になった悲劇の人物」と情緒的に語られることが少なくありません。しかし、中島敦が描いた李徴は決して無垢な被害者ではなく、「自らの傲慢さと怠慢によって自らを獣へと堕落させた加害者」という冷徹な自己認識を持っています。この客観的かつ痛烈な自己断罪のトーンを答案に反映できているかどうかが、トップ層と平均点層を分ける決定的な分岐点となります。