中継環境の急激なデジタルシフトに対して、一般の視聴者や熱心なサポーターはどのような受け止め方をしているのでしょうか。ソーシャルメディアや掲示板コミュニティでのサッカーワールドカップネットの反応を検証すると、期待と戸惑いが交錯するリアルな本音が浮き彫りになります。
大手ネット掲示板やSNS上の投稿を分析すると、「月額数千円を払ってまで全試合を見る時間的余裕はない」「せめて日本代表戦くらいは無料の地上波でやってほしい」というライト層の切実な声が根強く存在します。その一方で、20代から30代のデジタルネイティブ世代からは、「テレビ受像機を持っていないので、最初からスマホやタブレットで快適に観られる配信の方がありがたい」「通勤電車の中で画質が落ちずに再生できるなら有料会員でも惜しくない」という実利的な意見が目立ちます。
社会学的な視点で見れば、これは昭和・平成期に成立した「家族や職場の仲間が同じ茶の間のテレビ画面を見つめ、一つの国民的イベントを共有する」という一体感の希薄化を意味しています。個人がそれぞれの端末で、好きな時間に、好みの解説チャンネル(本配信、戦術特化、裏実況など)を選び取って楽しむ「視聴体験のパーソナライゼーション(個別化)」が決定的に進行しているのです。かつての「お茶の間の熱狂」が失われたと嘆く声がある反面、情報リテラシーの高いファンにとっては、不要な演出やタレントトークを排した質の高い中継を選べる自由な時代が到来したとも解釈できます。