M字開脚が局所的なグラビアの話題にとどまらず、国民的な社会現象へと跳ね上がった最大の契機は、2004年に旗揚げされたエンターテインメント・プロレスイベント『ハッスル』への電撃参戦でした。格闘技色の強かったリングに「インリン様」として君臨した彼女は、ヒール(悪役)ユニット「高田モンスター軍」の象徴として絶対的な存在感を誇示しました。
リング上で披露された「ビターン!」と呼ばれるムチ打ち攻撃や、対戦相手を踏みつけながら繰り出すM字開脚のポーズは、プロレスファンのみならず一般視聴者をも驚愕させました。高田延彦扮する高田総統やキャプテン・ハッスルこと小川直也らとの熾烈な抗争は、テレビ東京系列の地上波特番や全国ネットのバラエティ番組で幾度となく大々的に取り上げられ、深夜帯だけでなくゴールデンタイムのお茶の間まで揺るがすことになります。
なぜここまで受け入れられたのか。メディア論の観点から分析すると、インリン自身が醸し出す「自立した女性の強さ」と「ユーモアを理解した自己プロデュース力」が、男性目線のエロティシズムを中和し、女性層からも「カッコいい」「堂々としている」と支持された点が挙げられます。単に消費されるグラビアアイドルから、自らの世界観で空間を支配するエンターテイナーへと昇華したことが、ブームを社会現象へと押し上げた構造的要因です。