邦ロックシーンにおける「夏ソング」の歴史を塗り替えた『君と夏フェス』。この楽曲が誕生した2014年当時、SHISHAMOは高校を卒業したばかりの若きスリーピースバンドとして急速に注目を集めていました。メジャーデビュー以降の快進撃を決定づけた本作ですが、その制作背景には驚くべき事実が隠されています。
作詞・作曲を手掛けた宮崎朝子は、当時の音楽専門誌や公式インタビューにおいて「実は曲を書いた当時、一度も夏フェスに行ったことがなかった」と告白しています。実際のフェス体験に基づくドキュメンタリーではなく、少女漫画を愛読し、卓越した想像力を持つ宮崎が「もし好きな男の子と夏フェスに行ったらどうなるか」を完全な妄想として構築したフィクションでした。
現場のリアルな空気を知らないからこそ、客観的かつ純粋な「憧れ」と「恋する女子の自意識」が純度100%で抽出されました。実体験の制約に縛られず、リスナー誰もが思い描く「理想と焦燥が入り混じる夏フェス像」を精緻に描き出したことこそが、本作が時代やトレンドに左右されず輝き続ける原点となっています。