アミノ酸サプリメントの売り場で消費者が最も混乱するのが、EAAとBCAAの違いである。どちらもワークアウトドリンクとして定着しているが、その中身と体内での挙動は明確に異なっている。
BCAA(Branched Chain Amino Acids)は、必須アミノ酸のうち構造内に分岐した炭素鎖を持つ「バリン・ロイシン・イソロイシン」の3種類だけを抽出したものである。骨格筋に含まれる必須アミノ酸の約35%を占め、運動中の筋グリコーゲン枯渇時に自らが代替エネルギー源として燃焼される性質を持つ。さらにロイシンが前述のmTORシグナルを刺激するため、筋分解の抑制と疲労感の軽減に特化した構成といえる。
これに対し、EAA(Essential Amino Acids)はバリン・ロイシン・イソロイシンを含む必須アミノ酸全9種類を網羅している。筋肉の合成スイッチを押すだけでなく、実際に新しい筋組織を組み立てるための「直接的な原材料」まで全て揃っている点がBCAAとの決定的な違いである。どれほど強力に合成スイッチを入れたとしても、材料となるアミノ酸が1種類でも欠けていれば、身体は自らの筋組織を分解して不足分を補おうとする。そのため、本格的な筋肥大を追求する場面ではEAAが選ばれる傾向が強い。
これらを踏まえた筋トレ時の摂取タイミングの最適解は、血中濃度のタイムラグから逆算して導き出すことができる。
トレーニングの60〜90分前であれば、消化の時間を確保できるためホエイプロテインの摂取が適している。これにより、トレーニング開始と同時に血中アミノ酸濃度が高い状態を作り出せる。一方で、トレーニング中(イントラワークアウト)に飲むワークアウトドリンクとしては、消化管に負担をかけず15分で血流に乗るEAAやBCAAの独壇場となる。さらにトレーニング直後から30分以内は、プロテインまたはEAAを速やかに補給することで、筋破壊から修復へのシフトを加速させることが可能となる。
また、ベースとなるホエイプロテインの選び方にも注意を払いたい。牛乳由来のホエイプロテインには、一般的な濃縮乳清タンパク質である「WPC(ホエイプロテイン・コンセントレート)」と、高度なろ過処理を施した「WPI(ホエイプロテイン・アイソレート)」が存在する。牛乳を飲むとお腹がゴロゴロする「乳糖不耐症」の傾向がある人や、少しでも消化負担を減らして純度の高いタンパク質を確保したい場合は、乳糖や脂質を極限まで除去したWPIを選択するのが現場の定石である。