小春の音楽的骨格を形作ったのは、幼少期に出会ったアコーディオンの複雑で濃密な響きだった。大道芸人やサーカス団が醸し出す哀愁に満ちた空気に強く引きつけられた彼女は、伝統的なバルカン音楽や19世紀末から続くヴァードヴィルの雰囲気を、独自の感性で現代のポップミュージックへと昇華させていく。
蛇腹を押し引きするたびに漏れる空気の軋みや、金属リードが震えるダイレクトな振動。その可搬性の高い楽器を相棒に、彼女は街頭からライブハウス、さらには大劇場へと活動の場を急速に広げていった。哀愁と狂気が同居する独特の音像は、単なる「レトロ趣味」の域をはるかに超え、聴く者の記憶の底に眠る郷愁を激しく揺さぶる。