ツキノワグマの凶暴性と食害の実態を日本中に知らしめた決定的な出来事が、2016年に秋田県と青森県の県境付近で発生した「十和利山クマ襲撃事件」だ。タケノコ採りに入山した複数の男女が相次いで襲われ、4名が死亡、重軽傷者を出すという、本州におけるツキノワグマ被害としては戦後最悪の惨事となった。
当時、現場の調査に当たった元日本クマネットワーク理事の米田一彦氏ら専門家陣は、被害者の遺体に残された痕跡から、明らかに射殺されたツキノワグマが遺体を摂取していた事実を突き止めた。北海道のヒグマによる「三毛別羆事件」のような恐怖が、本州の森林でも起き得ることを示証した歴史的転換点である。