高度経済成長期の熱気冷めやらぬ時代に産声を上げたこのビルは、かつてキャバレーやスナック、麻雀店がひしめく歓楽街の心臓部だった。迷路のように入り組んだフロア構成、時代ごとに継ぎ接ぎされた配管、手書きの看板。これらは千日前の歴史そのものだ。
関係筋への取材によると、水面下で協議が重ねられてきた権利関係の整理が急ピッチで進展を見せている。長年ビルを支えてきた個性派テナントへの退去要請や移転補償の具体的な条件提示が始まっており、一部のフロアではすでにシャッターを下ろした区画が目立ち始めた。「いつかは来ると覚悟していたが、いざ現実になると足元が揺らぐ」。あるバーの店主は、カウンター越しにそう呟いた。