なぜ圧倒的な軍事力と最新兵器を誇る米軍が、ベトナムのジャングルやイラクの市街戦で手痛い挫折を味わうことになったのでしょうか。報道各社の取材記録や元国防長官の回顧録、前線に投入された将兵の手記を精査すると、「軍事技術では圧倒しても、現地の政治・宗教・民族力学に無知であったこと」が共通の敗因として浮かび上がります。
ベトナム戦争で国防長官を務めたロバート・マクナマラは、自著の回顧録で「我々は相手の歴史、文化、国民性を致命的なまでに理解していなかった」と生の告白を残しています。米軍は敵の遺体数を戦果指標とする「ボディカウント(死者数至上主義)」に頼り、爆撃トン数やハイテク火力で圧倒しようとしました。しかし、民族解放と独立を掲げるベトナム人民軍・南ベトナム解放民族戦線のゲリラ戦と不屈の士気を挫くことはできず、さらにテレビ報道によって悲惨な戦況が米国内に生中継されたことで、世論の反戦熱が高まり撤退を余儀なくされました。
そして2003年のイラク戦争では、同様の過ちがより深刻な形で繰り返されました。サダム・フセイン政権をわずか数週間で打倒したものの、戦後に旧バース党員や軍人を一斉解雇したことで統治機構が完全崩壊。職を失った数十万人の武装兵士が反米ゲリラやテロ組織へと流れ込み、泥沼の泥仕合へと発展しました。
米国防総省関連の統計や退役軍人省の報告書によると、イラク・アフガン帰還兵の約20%以上が重度のPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症し、自殺率は一般人の約1.5倍に達しています。SNSや米大手掲示板Redditの退役軍人コミュニティには、「正義のために戦うと信じて戦場へ行ったが、守るべき大義などそこには存在しなかった」「失われた命と巨額の税金は何のためだったのか」という痛切な告発が今なお数多く寄せられています。この強烈な苦い経験こそが、現在のアメリカ国民の間にある「もう他国の戦争で米兵の血を流してはならない」という強い厭戦感情の源泉となっています。