山路和弘のキャリアを語る上で欠かせないのが、若い頃の過酷な下積み生活です。工業高校を卒業後に上京し、1979年に劇団青年座の研究所に入所。当時の劇団界隈は厳格な徒弟制度の色濃い環境であり、発声法や肉体訓練、舞台設営に至るまで徹底的に叩き込まれました。
20代から30代前半にかけては、舞台俳優として端役から着実にステップアップしつつ、生活のためにVシネマやテレビドラマの悪役・端役を数多くこなしました。当時の映像資料を確認すると、鋭い眼光と精悍なマスク、どこか危うい色気を放つ青年役として強烈な印象を残しています。
転機となったのは1990年代、洋画吹き替えの現場に本格進出したことでした。舞台仕込みの正確な滑舌と、マイク前でも全身で感情を表現する演技スタイルは、海外映画の吹き替え演出家たちから瞬く間に高い評価を獲得。その後、2011年にはミュージカル『宝塚BOYS』や舞台『アンナ・カレーニナ』での演技が高く評価され、演劇界の栄誉である第36回菊田一夫演劇賞を受賞。2018年には声優アワード「富山敬賞」を受賞するなど、名実ともに日本のトップランナーへと登り詰めました。